インドへの旅は、今から約一年程前、新型コロナで移動が出来なくなる以前のことである。
自身の住まいの一画を滞在型アトリエとして開放し、アジアの母親アーティストを調査研究しているインド人アーティスト、ルチカさんを訪ねた今回の滞在は、家族で一週間という短い時間であったが、私が普段行なっている手法を用いインド現地の布地などで制作する事と、小学生対象のワークショップを行うという二本柱で行い、制作した作品はルチカさんの研究素材として納めた。
はじめて訪れたインドは渾々沌々の空港から始まり、車線なんてお構い無しで飛ばしまくるタクシーに揺られながら進んだ。車線通り走っていた日本での規則正しさが何と貴重なことかと心底体感しながら無事にルチカさんの家に着くことを祈った。到着したルチカファミリーは敬虔なシク教のお宅で、優しいご両親と旦那さん、娘さんの5人家族。シク教は世界で5番目に信者が多い宗教で、男性は頭にターバンを巻いているのだが、これは生まれてから一度も切っていない髪をまとめる為だよと旦那さんが教えてくれた。我が娘を可愛がってくれてファミリーとの親交は今でも続いている。
ワークショップはルチカさんと縁のある小学校の5年生、総勢120名と一緒に体育館で大きなロール紙を長々と引き詰めて、友達とぎゅうぎゅうになりながら行った。
沖縄から持参した月桃紙をひとりひとりに手渡し、質感を感じてもらいながら沖縄の風土、ムーチーなどの食文化や伝えることで沖縄を知ってもらい、小さな時の記憶の中に「おきなわ」というキーワードが響いてくれたらと願った。人で賑わう市場や町中をウロウロと歩く大きな牛、なかなか止まってくれないリキシャー(三輪バイク)に乗り込んでぶつかりそうなギリギリを進む道々。いろんな記憶が蘇る。
コロナで再びのインドはまだまだ見えないが、いつかまたみんなに会いたいと思う
提供:琉球新報